UPSの選び方ガイド:停電対策のための無停電電源装置選定のステップ
UPSの選び方ガイド:停電対策のための無停電電源装置選定のステップ
停電や電圧変動から、大切な機器を守るために必要な無停電電源装置(UPS)。
しかし、実際に導入を検討する中で、どのUPSを選べばよいのか分からず、機器の選定に悩んでいる企業も多いのではないでしょうか?本コラムでは、UPSを選ぶ際に考慮すべきポイントを、3つのステップに分けて解説しています。
STEP1:UPSの使用環境を確認
UPSを選定する際にまず確認したいのが、UPSを使用する環境です。ここで確認したい項目には、以下の3つがあります。
1.1 入力電圧
1.2 接続機器とその電力要件(容量)
1.3 UPSの設置場所
それぞれを考えるときのポイントを、詳しく見ていきましょう。
1.1 入力電圧
1つ目に確認したいのは、大前提となる入力電圧(UPSへ電力を供給する際の電圧)です。入力電圧は機器ごとに範囲が規定されており、この範囲を外れた電圧が供給された場合、正しい動作や製品仕様が保証されなくなり、故障のリスクが上がります。
もちろんUPSも例外ではなく、製品を選定する際はまず、入力電圧が使用環境に合っているかを確認しなければなりません。
一般的に、日本における電圧は100Vが主流です。しかし近年では、データセンターを筆頭に100Vではなく200Vを採用している環境も増えてきました。
供給電力が100Vか200Vかは、コンセントの形状で見分けることができます。右の表を参考に、UPSを接続する予定のコンセントを確認してみてください。
1.2 接続機器とその電力要件
続いて2つ目に確認したい項目は、UPSの先に繋ぐ機器についてです。対象の機器とUPSの電力要件が合っていなければ、容量が足りず必要なときに電力を供給しきれなくなる可能性があります。容量が大きすぎても、UPSに掛けたコストが無駄になってしまいかねません。
デスクトップパソコン、モニター、NAS、サーバーなど、UPSと接続し保護したい機器の電力要件を確認しましょう。ここでは具体例と併せて解説していきます。オフィス(100V供給)の一角にある小規模のサーバーラック内で、表内の機器を保護したいために適切なUPSを選びたい場合、各電力要件は以下の通りです。
消費電力 | Input | ||||
W(ワット) | VA(ボルトアンペア) | 力率 | V(ボルト) | A(アンペア) | |
サーバー | 350W | 368VA | 0.95 | 100V | 3.68A |
NAS | 80W | 100VA | 0.8 | 100V | 1A |
ルーター | 15W | 20VA | 0.75 | 100V | 0.2A |
インターネットスイッチ | 20W | 25VA | 0.8 | 100V | 0.25A |
機器ごとの消費電力は製品ラベルに記載されているか、カタログなど製品の情報がまとまったもので確認することができます。表に挙げた例では、消費電力だけ見ると合計 465W が必要だと分かりました。ただ、ここで [VA(ボルトアンペア)] という単位にも注意が必要です。
UPS選定においては、[W(ワット)] だけでなく [VA(ボルトアンペア)] も考慮しなければなりません。[VA(ボルトアンペア)] というのは「皮相電力」を意味しており、以下の計算式で求められます。
[VA(ボルトアンペア)] = [W(ワット)] ÷ 力率
力率とは、供給された電力を、いかに無駄なく有効利用できているかを表す指標です。つまり[VA(ボルトアンペア・皮相電力)] とは、無駄分を含めて機器を動かすために供給されるべき電力を指します。
力率は [W(ワット)] と同様、製品ラベルやカタログなどで確認することが可能です。どちらにも記載がない場合は、力率を仮に1として計算を進めてください。
先ほどの表を見ると、対象機器の [VA(ボルトアンペア)] は、合計 513VA でした。一旦ここまでの情報を整理すると、今回の例でUPSに求められるスペックは、入力電圧が 100V で、容量が消費電力 513VA / 465W 以上となります。
容量の考え方
一般にいわれるUPSの「容量」とは、[W(ワット)] と [VA(ボルトアンペア)] 両方の数値を指します。UPSを選定する際は、[W(ワット)] と [VA(ボルトアンペア)] 両方とも上回る製品を選びましょう。
このときの参考として通常、合計消費電力の1.2~1.5倍の容量を持つUPSを選ぶと安心であるとよくいわれています。これは現状対象となる機器だけをカバーすればよいのではなく、将来的な機器の追加や変更を考慮する必要があるためです。
UPSと接続する機器も将来的に買い替えまたは追加することが想定されるため、容量がギリギリのUPSを選ぶと、機器側の消費電力がUPSの容量を超えてしまいます。そうなるとUPS自体も新しく導入する必要が出てきて、余分にコストが掛かってしまう点に注意が必要です。最初から若干の余裕がある容量のUPSを選び、長期的なコストカットを意識しましょう。
また、容量の大きいUPSを選ぶことにより、バックアップできる時間が延びる傾向にあることも1つの利点になります。
1.3 UPSの設置場所
STEP1の最後に紹介したいのが、意外と忘れがちなUPSの設置場所です。入力電圧や電力要件が合致していたとしても、物理的に設置が難しいUPSは導入できません。
今までのSTEPで絞られた製品からどのようにUPSを設置するのかを考えるのも1つの選択肢ですが、あらかじめ限られたスペースが決まっている場合は、そのサイズに合わせて選定を進めてください。
STEP2:バックアップ時間を決める
使用環境を確認できたら、実際の停電など電源障害が発生した際にどれくらいの時間電力を供給する必要があるのかを示す「バックアップ時間」を決めます。
バックアップ時間は、UPSからの電力供給をしている間に何をしたいのか?を考えて下さい。例えば以下のように、目的ごとによりバックアップ時間が変わってきます。
- 接続機器を安全にシャットダウンするために必要な時間分、電力供給をしたい:5〜10分
- 電力が復旧または非常用発電機が起動するまでの間、電力供給をしたい:10〜30分
※上記はあくまで例なので、UPSを使用する環境に合わせて確認してください。
バックアップ時間が決まったら、STEP1で絞り込んだ製品の情報を確認し、最適な機種を選定しましょう。必要なバックアップ時間を満たすものがない、より大きい機種を選ぶにはコストが掛かりすぎるといった場合には、拡張バッテリーを利用する方法もあります。
明京電機で取り扱っているVertiv社のUPSにおいては、拡張バッテリーを用意しています。必要なバックアップ時間に合わせて拡張できる上、将来の環境の変化に合わせて追加も可能です。柔軟に対応できるだけでなく、場合によってはトータルのコストを抑えられる可能性もあるので、ぜひ検討してみてください。
STEP3:給電方式を選ぶ
UPSの給電方式にはいくつかの種類があり、用途に応じて適切な方式を選ぶ必要があります。代表的な給電方式は、以下の3つです。
- 常時商用給電方式:
普段は商用電源をそのまま対象機器に供給し、停電時にバッテリー電源へ切り替わる方式です。コストは低く手頃に導入可能ですが、切り替え時に5~10ミリ秒ほど掛かり瞬断が発生します。
- ラインインタラクティブ:
電気の流れは常時商用給電方式と同じですが、商用電源の電圧変動に対応し、安定した電力を供給する方式です。一般的な用途に最適。切り替え時間は4~10ミリ秒ほどで同じく瞬断が発生します。
- 常時インバータ給電方式:
常にインバータを通して電力を供給する方式で、電圧や周波数の変動を完全に排除します。また切り替え時に瞬断が発生しません。高価ですが、最も安定した電力供給が可能です。
例えば、オフィスのパソコンであればラインインタラクティブが適していますが、データセンターには常時インバータ給電方式が適切です。
+α:知っておくと便利な知識
今までの3STEPを踏むことでUPSの選定が可能ですが、知っておくとさらに有用な知識も押さえておきましょう。
- バッテリーの種類
- 電力監視機能
- 配線方式「単相」と「三相」の違い
この3つについて、詳しく解説します。
1. バッテリーの種類
まず1つ目はバッテリーの種類についてです。現在UPSで採用されているバッテリーには、主に鉛蓄電池とリチウムイオン電池の2種類があります。
- 鉛蓄電池:
コストは低く導入しやすいメリットがありますが、寿命が短く定期的なメンテナンスが必要です。
- リチウムイオン電池:
初期費用は高価ですが、寿命が長くメンテナンスが少なく済みます。鉛蓄電池と同容量帯のスペックで比較すると、製品サイズがよりコンパクトになるなど魅力的な要素が多い電池です。
バッテリーについてより詳しい内容については、下記コラムを参照ください。
2. 電力監視機能
続いて押さえておきたいのが、電力の監視機能についてです。「ネットワークカード」をUPSに接続することにより、消費している電力を遠隔にて監視できるようになります。オプションとなってしまいますが、電力環境の最適化ができるため、電力消費が大きくなりがちなサーバー回りでは特に重宝されます。
3. 配線方式「単相」と「三相」の違い
UPSには配線方式が単相と三相の2種類があると聞き、どちらが優れているのか気になっているかもしれません。配線方式について簡単にまとめると、一般家庭や中小規模のオフィスでは「単相」、工場やデータセンター等電気を多く消費する環境では「三相」がより多く採用されています。
「単相」「三相」に関する詳しい説明は、今後展開するコラムで解説する予定です。
まとめ
UPSの選び方には、接続する機器の消費電力、必要なバックアップ時間、適切な給電方式、バッテリーの種類など、いくつかの重要なポイントがあります。このコラムを参考に、自分のニーズに合ったUPSを選び、大切な機器を保護しましょう。
明京電機が取り扱っているVertiv社のUPS製品には、多くの種類があります。
今回のコラムで例として挙げていたケースに、おすすめの製品はこちらです。
GXT5-750LVRT2UXL
・750VA / 750W
・常時インバータ給電方式
・最大1.0の高力率
・ネットワークカード対応(別売り)
・3年保証
GXT5LI-1000LVRT2UXL
・1000VA / 1000W
・リチウムイオン電池搭載
・常時インバータ給電方式
・最大1.0の高力率
・ネットワークカード対応(別売り)
・5年保証
上記の製品以外にも、お客様の要件に合わせたソリューションを提供することが可能な場合もあります。疑問や相談があれば、問い合わせフォームやお電話にて、ぜひお気軽にお問い合わせください。
UPSシリーズ一覧
GXT5-Li
常時インバータ
リチウムイオン電池
GXT5
常時インバータ
鉛蓄電池
PSI5-Li
ラインインタラクティブ
リチウムイオン電池
PSI5
ラインインタラクティブ
鉛蓄電池
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